丈夫がいいね
(2463)白内障(下) 手術で回復「4Kみたい」 人工レンズの性能進化
 金沢医科大病院で、白内障の手術を受けた70代の女性患者が目を輝かせていた。「世の中全部がはっきり見える。まるで4Kテレビのよう。治療して本当によかった」。2泊3日の入院生活を終えた女性は足取りも軽く、病院を後にした。
 同大眼科学講座の佐々木洋主任教授は「病気の治療は元の状態に近づけるのが基本ですが、白内障は、手術によって治療前以上の状態になる。その効果は劇的です」と力を込める。
 そんな事例は、この女性以外にもある。
 金沢市内の50代男性は、学生時代から強い近視に悩んでいた。若いうちは、眼鏡を掛けていれば大丈夫だったが、年齢を重ねて、徐々に見えづらくなった。眼鏡を作り直したが、すぐに合わなくなった。
 「このままでは、仕事にも支障が出る」。病院を受診した結果、病名は白内障。医師の勧めもあり、手術を受けることにした。
 術後、まぶたを開いた男性は驚いた。「こんなにくっきり見えるなんて」
10分で処置

 白内障の手術では、白く濁ってしまった水晶体を、人工のレンズに置き換える。
 一見すると、大がかりで長時間の手術のように感じるが、熟練の技を持つ医師が執刀すれば、水晶体を砕いて目から取り除き、折り畳まれた人工レンズを入れるまで10分とかからない。
 佐々木主任教授は「点眼薬の麻酔を使うため、痛みもほとんどない」と語る。実際、同大学病院では、毎年1500件の手術が行われている。
 では、治療前より、よく見えるようになるのは、なぜなのか。
 答えは単純である。近視や、遠視の人が眼鏡で矯正するように、患者の目の状態に合わせた人工レンズを目に入れるためである。
 レンズは大きく、単焦点、多焦点に分けられる。単焦点は、近くか遠くかどちらか1点に焦点を合わせるタイプで、多焦点は遠くから近くまで焦点を合わせられる。多焦点を選べば、既に老眼になっていた人も、その悩みから解放される。
 ただ、単焦点は保険適用される一方で、多焦点は、追加の費用がかかる「選定療養」となり、レンズ代は自己負担となる。佐々木主任教授によると、片眼で治療費はおよそ20〜30万円となる。
 それでも、レンズの性能の進歩はめざましい。近年、単焦点でも、多焦点に近いタイプのレンズが登場している。これならば、保険適用の範囲内となる。
転倒のリスク回避

 白内障治療のメリットは、単に視力が良くなるだけではない。人が外部から得る情報は、8割が目からとされている。白内障で目が衰えれば、転倒するリスクがある。また、目が見えにくいことで外出を控えたりした結果、認知症につながる恐れがある。佐々木主任教授は「視力を取り戻すことで、それらを防ぐことが期待できる。白内障手術は、アンチエイジングになる」と強調する。
 平均寿命が80歳を超えた現代、白内障を避けて人生を歩むことはできない。健康長寿を考えれば、白内障治療をためらう理由はないのである。